耳鼻咽喉科展望
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臨床
小児に対するアデノイド切除術前後の嗅覚同定能の変化について
由井 亮輔森 恵莉阿久津 泰伴中島 大輝竹下 直宏三浦 正寛太田 史一千葉 伸太郎
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2022 年 65 巻 2 号 p. 68-73

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抄録

背景:小児嗅覚障害はQOL低下に加えて,精神面や社会活動にも関与すると言われているが,本邦において小児嗅覚障害の実態に関する研究はなされていない。今回われわれは,アデノイド増殖症罹患児の嗅覚同定能を調べ,健常児との比較,アデノイド切除術前後の変化を調べたので報告する。

方法:当院においてアデノイド切除術を施行した5歳から12歳までの小児10名(男9名,女1名,平均年齢8.30歳±1.68歳,5歳–12歳)を対象とした。カード式嗅覚検査Open Essenceを用いて術前,術後6週,術後6ヵ月の正答数を調べた。比較対象には過去に集計した同年代で年齢の差のない健常児168名(平均年齢9.04±1.44歳)のOpen Essence正答数を用いた。

結果:術前Open Essence平均正答数は6.60±1.20点で,術後6週に7.0±1.87点,6ヵ月に8.00±1.48点と変化した。術前のOpen Essence平均正答数は,健常児(8.03±2.20点)と比較して有意に低かった(p=0.016)が,アデノイド切除術後6ヵ月は,健常児と有意差を認めない(p=0.846)程度まで改善した。

結論:アデノイド増殖症児は健常児と比較し、嗅覚同定能が低下しているが,外科的介入により改善が期待できる可能性がある。嗅覚障害の観点からもアデノイド切除術を考慮の一助になると考えられた。

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