耳鼻咽喉科展望
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65 巻, 2 号
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カラーアトラス
綜説
臨床
  • 麻植 章弘, 飯村 慈朗, 積山 真也, 弦本 惟郎, 関根 瑠美, 森 恵莉, 宮脇 剛司, 小島 博己, 鴻 信義
    原稿種別: 臨床
    2022 年 65 巻 2 号 p. 62-67
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    眼窩壁骨折の外科的治療には,経鼻内法,経上顎洞法,経眼窩法があり,当科では経鼻内法が主に施行される術式であった。今回,眼窩下壁が前壁から外側にかけてL字型に広範囲に骨折している眼窩下壁の線状型骨折症例を経験した。術式は,経鼻内法に加え経眼窩法を併せたcombined approachによる整復術である。経鼻内法はEndoscopic Modified Medial Maxillectomyによるアプローチ方法であり,経眼窩法は経結膜切開によるアプローチ法である。従来から,経鼻内法は眼窩下壁後方の骨折には有効であるが前方の骨折に対しては整復困難とされ,経眼窩法は眼窩下壁前方の骨折には有効であるが後方の骨折に対しては整復困難とされている。本症例は,眼窩下壁前方から後方まで広範囲の骨折であり,combined approachによる整復術で術後に審美的な問題もなく,良好な術後経過であった。広範囲の眼窩壁骨折に対しては,combined approachによる整復術が有用であり,症例に応じた術式選択が重要であると考える。

  • 由井 亮輔, 森 恵莉, 阿久津 泰伴, 中島 大輝, 竹下 直宏, 三浦 正寛, 太田 史一, 千葉 伸太郎
    原稿種別: 臨床
    2022 年 65 巻 2 号 p. 68-73
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    背景:小児嗅覚障害はQOL低下に加えて,精神面や社会活動にも関与すると言われているが,本邦において小児嗅覚障害の実態に関する研究はなされていない。今回われわれは,アデノイド増殖症罹患児の嗅覚同定能を調べ,健常児との比較,アデノイド切除術前後の変化を調べたので報告する。

    方法:当院においてアデノイド切除術を施行した5歳から12歳までの小児10名(男9名,女1名,平均年齢8.30歳±1.68歳,5歳–12歳)を対象とした。カード式嗅覚検査Open Essenceを用いて術前,術後6週,術後6ヵ月の正答数を調べた。比較対象には過去に集計した同年代で年齢の差のない健常児168名(平均年齢9.04±1.44歳)のOpen Essence正答数を用いた。

    結果:術前Open Essence平均正答数は6.60±1.20点で,術後6週に7.0±1.87点,6ヵ月に8.00±1.48点と変化した。術前のOpen Essence平均正答数は,健常児(8.03±2.20点)と比較して有意に低かった(p=0.016)が,アデノイド切除術後6ヵ月は,健常児と有意差を認めない(p=0.846)程度まで改善した。

    結論:アデノイド増殖症児は健常児と比較し、嗅覚同定能が低下しているが,外科的介入により改善が期待できる可能性がある。嗅覚障害の観点からもアデノイド切除術を考慮の一助になると考えられた。

  • 亀井 優嘉里, 寺西 裕一, 高野 さくらこ, 角南 貴司子
    原稿種別: 臨床
    2022 年 65 巻 2 号 p. 74-78
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    増殖性外毛根鞘性嚢腫(proliferating trichilemmal tumor:PTT)は主に女性の被髪頭部に生じる稀な皮膚腫瘍の一つである。今回われわれは,当初右耳下腺腫瘍を疑っていたが,摘出手術後に病理組織診断にてPTTと診断した症例を経験した。症例は40歳男性,増大する右耳下部腫瘤を主訴として当院当科を受診した。画像検査所見からはワルチン腫瘍や多形腺腫などの耳下腺腫瘍に典型的な所見ではなかったが,右耳下腺腫瘍を疑い摘出手術を行った。病理組織診断で外毛根鞘性角化という特徴的な所見を認め,PTTと診断された。PTTは再発や悪性化の可能性もある腫瘍であるが,術後3年時点で再発は認めていない。頭頸部領域に皮膚腫瘍を認めることもあり,留意する必要がある。

境界領域
  • ―耳鼻咽喉科とのかかわり―
    小林 正久
    原稿種別: 境界領域
    2022 年 65 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    先天代謝異常症とは,遺伝的な原因により特定の酵素機能が欠損することで発症する疾患群である。単一遺伝子異常であり,一つ一つの疾患は稀少疾患である。先天代謝異常症で耳鼻咽喉科と関わりの深い疾患としては,ムコ多糖症,ファブリー病が挙げられる。ムコ多糖症は,軟部組織,耳小骨にムコ多糖症が蓄積することにより,反復する中耳炎,上気道狭窄,難聴を発症する。全身麻酔,鎮静時は,上気道狭窄症状の増悪から呼吸不全へ至り,気管切開が必要となることがある。ファブリー病では,内耳機能障害から聴力障害,耳鳴りを発症することがある。両疾患とも,酵素補充療法が日本で保険承認されている。酵素補充療法は,1~2週間に1回,点滴で酵素を補充する治療法である。ムコ多糖症では,酵素補充療法の耳鼻科的合併症に対する効果は明らかなエビデンスはないが,小児期早期より治療開始することで改善する可能性がある。ファブリー病に対する酵素補充療法では,内耳機能が安定し,症状の進行を抑制することができると報告されている。

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