耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
原著
長期的な経過を経て不幸な転帰をたどった転移性多形腺腫の2例
福田 伸樹大戸 弘人伊藤 江里奈川﨑 健史海老原 央
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 67 巻 3 号 p. 133-138

詳細
抄録

多形腺腫は唾液腺腫瘍の中で最も頻度の高い良性腫瘍である.しかし,病理学的に悪性所見を認めないにも関わらず遠隔転移を呈する症例が稀に存在し,転移性多形腺腫と呼ばれる.今回我々は不幸な転機をたどった転移性多形腺腫の2例を経験した.

症例1は24歳女性.X年に耳下腺腫瘍摘出術を施行し,多形腺腫と診断した.X + 17年・X + 19年・X + 21年に局所再発したため,摘出術を施行したが,X + 22年に腰椎転移・肺転移を認めた.転移性腫瘍に対しても手術を施行したが,その後も局所再発や腰椎・肺転移を認めた.病理結果は全て多形腺腫であった.X + 26年に肺転移増大に伴う呼吸不全により永眠された.症例2は33歳女性.Y年に口蓋腫瘍の摘出術を当院口腔外科で施行し,多形腺腫と診断された.Y + 5年に局所再発を認め,再発病変に対して摘出術を施行したが,その後も局所再発および多発骨転移・肺転移を認めた.Y + 29年に肺転移増大による呼吸不全のため永眠された.

転移性多形腺腫は転移をきたした後も比較的予後良好である報告が多いが,最終的に致死的な経過をたどる可能性があるため,注意深い経過観察や患者への説明が重要である.

著者関連情報
© 2024 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top