耳鼻咽喉科展望
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原著
片側性副鼻腔炎から広範な血栓症を来したレミエール症候群の1例
津田 怜美神谷 朋子露無 松里中条 恭子
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2024 年 67 巻 4 号 p. 218-224

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抄録

レミエール症候群は口腔咽頭に代表される,頭頸部領域の感染症が内頸静脈の血栓性静脈炎を引き起こし,さらに敗血症性塞栓から遠隔感染膿瘍などの重篤な全身症状を呈する感染症である.現在抗菌薬の発達により死亡率は低下したとされるが,依然,早期の診断,治療が必要な疾患である.今回,片側副鼻腔炎から広範な血栓症を来したが,後遺症を残さず救命し得たレミエール症候群の1例を経験したので報告する.症例は45歳男性,意識障害で当院救急外来に搬送された.造影CT検査で両側外頸静脈,両側内頸静脈,両側横静脈洞から左S状静脈洞に造影欠損域を認めた.さらに両側肺にも結節状のすりガラス陰影があり,レミエール症候群が疑われた.原因感染巣として左汎副鼻腔炎が考えられ,全身麻酔下で左内視鏡下副鼻腔手術を行った.術後は速やかに理学所見,臨床症状の改善を認めた.これまで報告されている副鼻腔炎からレミエール症候群を来した16例に対し文献的考察を行ったところ,外科的介入が予後を改善したと結論づけることは困難であったが,適切な抗菌薬治療のみならず,外科的介入を行うタイミングを検討することは重要であると考えられた.

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