耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
突発性難聴に対するメチコバールの大量点滴静注療法の効果
高安 劭次香取 公明香取 早苗
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 33 巻 Supplement4 号 p. 623-629

詳細
抄録

突発性難聴に関する薬効は, 通常, ある主薬と一般に併用されている基礎治療薬との総合効果として報告されている。
最近, 我々は, 基礎治療薬の一つで神経修復効果をもつメチコバールの大量療法を試みた。
対象は突発性難聴で入院した患者32名 (男性18名, 女性14名) である。メチコバールは1.5mgの大量を他の基礎治療薬である電解質液500mlとATP 40mgと共に点滴静注し, ステロイド漸減経口投与を併用した。
難聴に対する効果は, 厚生省の突発性難聴聴力回復の判定基準により4段階で判定した。
その結果, 治癒21例 (65.6%), 著明回復7例 (21.9%), 回復1例 (3.2%) で, 著明回復以上が87.5%, 回復以上では90.6%というこれまでに報告された治療成績の範囲を越えた好成績を得た。聴力レベルの改善は81.3dBを最高に, 平均でも33.9dBであった。また, 回復の程度には, 年齢, 性別による有意差は認められなかった。
22例に合併していた耳鳴りに対する効果も, 消失9例 (40.9%), 著効8例 (36.4%), 有効4例 (18.2%) で, 有効率は95.5%と高率であった。
また, メチコバール1.5mg/dayの連日大量投与によっても, メチコバールによると考えられる副作用は1例も認めなかった。このことから, 本剤は突発性難聴に対する第一選択治療法となりえるものと結論した。

著者関連情報
© 耳鼻咽喉科展望会
前の記事
feedback
Top