水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2013年度研究発表会
セッションID: P48
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【気候変動・地球環境】
年々変動の変化を考慮したトレンド保存型バイアス補正手法
*渡部 哲史平林 由希子鼎 信次郎
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抄録
大気大循環モデル(GCM)の計算結果を用いた気候変動の影響評価研究は数多く行われており、それらの研究では気候モデル出力値という時空間的に荒い解像度の情報から、水災害や水資源量のマネジメントに求められる詳細な解像度の情報をどのようにして得るかという点が問題となっている。これらの問題に対処する方法としてGCM出力値のバイアスを補正する様々な手法(バイアス補正手法)が検討されている。近年補正手法としてよく用いられる方法の一つとしてトレンド保存型のバイアス補正手法がある。これは、GCM出力値が示した現在期間の値と将来の値の差(将来変化量と定義する)と、補正結果から求めた将来変化量が一致するものである。気候変動の影響を考慮する際はGCM出力値が示した将来変化量は補正せずそのまま用いることが多いため、影響評価研究ではトレンド保存型補正手法が用いられることが多くなっている。既往の手法では一定の期間の平均値に関して変化の傾向を考慮しており、年々変動の変化の傾向については考慮されていない。そこで本研究では年々変動の変化についても考慮したトレンド保存型バイアス補正手法を提案した。手法の検証および比較のために、5つのGCM出力値を用いて1950-80年の観測値を基に、20世紀再現シナリオによる1981-2005年の予測結果ならびにRCP8.5シナリオによる2070-2099年の予測結果を補正し、平均値のトレンドのみ考慮した手法を適用した補正結果と、年々変動の傾向についても考慮した手法を適用した補正結果を比較した。20世紀再現実験による比較から、年々変動を考慮することにより日単位の再現性が向上することが明らかとなり、また21世紀予測実験からも両者の差は決して無視出来る大きさではないことが明らかとなった。これらの結果は年々変動に関する変化を考慮することの重要性を示唆している。今後年々変動に関する変化を考慮した補正手法を用いることにより、平均値のみ考慮して得られた水災害や水資源量に関する将来予測がどのように変化するかを考慮する必要がある。
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© 2013 水文・水資源学会
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