抄録
側頭骨の含気蜂巣発育は側頭骨自体の発育する時期に一致して形成される。側頭骨の発育には線維性と軟骨性の造骨過程が働き, 線維性の造骨部位では, 過去の実験結果が示すごとく, その発育時期内に炎症性の刺激が加わると, 蜂巣の発育が抑制されて蜂巣の抑制状態にいたる。一方軟骨性の造骨部位では, その骨代謝様式より, 炎症性刺激が加わっても抑制状態は起こりにくいと考えられる。人側頭骨36耳について検討を加えた結果, 上鼓室天蓋より乳突蜂巣後壁部にかけては生後4歳前後で発育が終了するため, この時期以前の含気腔内の炎症性刺激がこの部位での含気腔抑制状態を決定すると考えられる。しかし錐体部後方および外耳道後壁の後下部には軟骨性造骨点が観察され, この部位では含気腔の抑制は起こりにくいと考えられた。