耳鼻咽喉科展望
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人工内耳患者における子音聴取能の分析的研究
大橋 伸也
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1993 年 36 巻 5 号 p. 572-581

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抄録
人工内耳患者では母音の聴取能は比較的良好であるが, 子音は読話の助けを必要とすることが多い。そこで患者の子音聴取能を人工内耳のみの場合, 人工内耳と読話の併用の場合につき求め検討した。14の日本語子音に対する正答率の平均は, 人工内耳のみで50%, 人工内耳と読話の併用で85%であった。また平均情報伝達率では人工内耳のみの場合, 構音様式では有声性および半母音性で最も高く, 鼻音性で最も低かったが, 人工内耳と読話の場合は構音点で最も高く, 鼻音性で最も低いことがわかった。これらの結果は, 読話の助けがあれば情報伝達率は25~35%は改善されることを示した。さらにこれを重回帰分析した結果, 人工内耳のみの場合は, 鼻音性および半母音性が子音識別のために大きく寄与する特徴があり, 人工内耳と読話の併用の場合では構音点が最も大きい影響を及ぼすことが示された。
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