耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
嗅上皮の分化と老化に関する研究
北川 和久
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 37 巻 1 号 p. 22-40

詳細
抄録

ラットを用いて嗅上皮の機能と形態の関連について検討する目的で, 胎生19日, 生後3日, 成熟ラット, 老齢ラットについて, 光顕, 電顕, 免疫組織化学的手法 (抗N-CAM, 抗MAP5, 抗MAP2抗体) を用いて検討した。成熟ラットでは, 抗MAP2抗体に対しては嗅細胞層全体が反応し, 成熟した嗅細胞がほとんどであることを示していた。胎生19日, 生後3日では, 微細な点では形態的に未熟な部分もみられた。抗MAP5抗体に対しては表層から2-3層しか染まらず, また抗MAP2抗体に対しても最表層しか染まらず, 嗅細胞層の大部分は機能的には未熟であると考えられた。老齢ラットでは, 形態として基底膜の肥厚や嗅細胞数の減少など老化の所見がいくつも観察されたが, 抗MAP2抗体に対する反応は成熟ラットと類似しており, 神経細胞の新生は弱くなっているものの嗅覚機能は保たれているものと考えられた。

著者関連情報
© 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top