耳鼻咽喉科展望
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滲出性中耳炎の中耳腔気体の性質と鼓膜切開, 鼓膜換気チューブ挿入の効果について
大久保 仁山田 麻里辺土名 仁奥野 秀次
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1995 年 38 巻 6 号 p. 745-753

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抄録

中耳腔のガス分圧測定は, チンパノメトリがB・C型の滲出性中耳炎34耳を選び, 鼓膜切開直後の11耳と鼓膜換気チューブ挿入の効果ありと判定される23耳を対象とした。また, 鼓膜切開後から生じる中耳腔内圧変化を観察するために, C型6例とB型9例の15耳を選び耳鏡を利用した圧測定装置で測定した。
結果: 滲出性中耳炎は, 鼓膜切開や鼓膜換気チューブ挿入により, 閉鎖腔化が幾らかでも解消されると, 中耳腔のガス産生能が活発化して中耳腔内圧が大気圧よりも陽圧化した。この効果は, 体空洞換気の生理学的立場から見ると, 中耳腔の閉鎖腔化を鼓膜換気 (外耳道換気) で一時的に解消し, この閉鎖腔化の解消は, 中耳腔のガス代謝を活発化して換気効果を高めると考えられた。
また, 中耳腔のCやB型の過渡的陰圧化の現象は, 滲出液中にCO2が溶け込みHCO3-イオン化が生じて粘膜表面と気層問で行われるセンサー効果を外乱し, 中耳腔粘膜の変化とガス産生能の低下を招くものと考察した。
すなわち, 滲出性中耳炎に対する鼓膜切開や鼓膜換気チューブ挿入の効果は, 中耳腔換気を外耳道換気 (穿孔鼓膜換気) に置き換えた効果であり, 真に耳管機能不全を基礎に持つ遷延する滲出性中耳炎には, 耳管の機能改善治療を施さない限り改善は望めないと結論した。

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