耳鼻咽喉科展望
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内頸静脈血栓症の2症例
菊池 康隆富谷 義徳関 哲郎矢部 武本多 芳男太田 正治
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1996 年 39 巻 4 号 p. 396-404

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抄録

今回我々は稀な内頸静脈血栓症の2症例を経験したので報告した。症例1は41歳の男性で, 気管切開術創からの炎症の波及による頸部蜂窩織炎, 頻回の中心静脈カテーテルの留置に起因する左内頸静脈血栓症と思われた。症例2は57歳の男性で, 特発性の左内頸静脈血栓症と考えた。2症例ともリング状増強像などの特徴的な造影CT所見から診断は比較的容易であった。しかし, 血栓の占拠範囲の確定には静脈造影がきわめて有用であった。
症例1は左内頸静脈とともに血栓を除去したが, この手術操作が原因と思われる新たな血栓形成により後日左腋窩静脈から中枢側が閉塞したため左上肢の腫脹が出現した。症例2は抗血小板療法を行ったところ, 画像診断 (造影CTおよびMRI) 上血栓の消失をみた。
以上より内頸静脈血栓症では, 血栓静脈自体への外科的治療は肺塞栓など血栓の遊離に伴う重篤な合併症を助長する危険性があるため慎重に行う必要があることを再認識した。

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