抄録
KB親株細胞ならびに当科で樹立したCDDP耐性KB細胞を用いて, 耐性の修飾について基礎的研究を行った。抗癌剤 (CDDP) に耐性となったKB細胞に温熱との併用が耐性克服に有効か否かに関しては, 温熱による効果増強作用がみられ, CDDP耐性克服に有効であった。また温熱にCDDP, さらに膜修飾物質であるcepharanthinあるいはCa2+拮抗剤のverapamilを併用することにより, CDDP耐性KB細胞における耐性の克服について検討した。その結果, これらの薬剤処理では耐性克服はみられなかった。その原因として, CDDP耐性にP-91ycoproteinの関与がないことが考えられた。すなわちCDDP耐性株にP-glycoproteinが認められず, そのP-glycoproteinに影響を与えるといわれているcepharanthinあるいはverapamilが併用効果を示さなかった可能性が示唆された。KB親株細胞とCDDP耐性KB細胞に対し, 温熱処理に加えLAK細胞の感受性を検討した結果, 温熱処理によってLAK細胞の感受性が増強し, 抗癌剤耐性腫瘍への免疫療法の可能性が考えられた。今回のKB親株細胞とCDDP耐性KB細胞に対する温熱処理によるHSPの発現率は, 5~10%と比較的低値であり, HSP発現による温熱耐性はほとんど認められなかった。