抄録
240例の音声 (持続母音/a/) 資料のうち, 声帯振動が極度に不規則であったり全く振動していないと思われる27例を除いた213例を対象に電話回線を通す前後の音声資料から得られたPPQ, APQ, NNEaの3種類の音響パラメータに関して, 電話回線による変化の傾向, 直達音声と電話音声の相関関係, 嗄声度別に分類したグループ間の分離度を比較検討した。
その結果, 電話回線を通す前後の音響パラメータの間には強い相関関係がみられ, また, その変化に一定の傾向を認めた。3種類の嗄声度に分類したグループの分離度についてウィルクスのΛ統計量を計算したところ, グループ間の分離度には大きな差はなかった。
以上より, 電話音声に対しても従来の音響学的分析法が適用可能であるという結論を得た。