耳鼻咽喉科展望
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聴神経腫瘍の診療方針
橋本 省
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1997 年 40 巻 4 号 p. 452-458

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抄録
聴神経腫瘍は良性腫瘍であるので増大して脳幹を圧迫しない限り生命に直接の影響はなく, その診療においては機能保存が重要となる。手術に際し最も重要なのは顔面神経機能の保存であることはもちろんであるが, MRIの普及により早期診断が容易になった現在では, むしろ聴力保存の可否が問題となってきた。聴力保存を考えて手術を行う場合には, 聴力の評価と共に内耳道底に腫瘍が充満しているか否かが重要と思われ, 聴力が良好で内耳道底に腫瘍が存在しない例では成績がよい傾向にある。一般に聴力のよい小さな腫瘍を早く発見して手術することが聴力保存率を高めることにつながるが, 脳幹を圧迫していない小腫瘍で, 聴力がすでに悪化している例や腫瘍の状態から聴力保存が困難な例は直ちに手術の適応となるとは限らない。これまでの研究から約半数の腫瘍は明らかな増大を示さないことが判っており, 症例によってはMRIにて経過を観察し増大が確認されれば手術に踏み切るという方針をとることもある。
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