抄録
慢性副鼻腔炎の病態は炎症による粘膜の機能不全と副鼻腔換気不全である。我々は, 副鼻腔の換気に着眼し, 鼻腔・上顎洞モデルを作成, 上顎洞の圧変動を測定することにより, 鼻腔・上顎洞間の換気状態につき以前報告した。今回, 鼻腔・上顎洞モデルに新しく鼻腔副鼻腔の交通路を設け, 自然孔モデル, 対孔モデルと名付けた。気流ならびに鼻・副鼻腔圧変動を測定し, 対孔の意義を含め流体力学的に検討した。鼻腔モデル内流速の増加, 対孔の造設は, 上顎洞モデル内圧変動を増大させた。対孔モデルの造設に自然口モデル径の拡大を加えることにより, 上顎洞内圧の変動は増大し, 鼻腔・上顎洞間の換気は増大した。
さらに生体の鼻腔・上顎洞内圧を同時測定し両者間の換気につきモデル実験と合わせ, 比較検討した。ヒトでは, 安静呼吸時と頻呼吸時につき計8例 (男性6例, 女性2例) で測定し, 対孔造設例では鼻腔内圧および上顎洞内圧は安静呼吸に比し頻呼吸で有意に増大した。