耳鼻咽喉科展望
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臨床薬学よりみたネブライザー療法
吉山 友二
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1999 年 42 巻 Supplement2 号 p. 189-194

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抄録

ネブライザー療法は, ドラッグデリバリーシステム (DDS) の観点からも病変部位に薬剤が直接到達して効果を発現する局所療法という観点で理想的であり, 各科領域において有用視されている。とりわけ, 超音波ネブライザーによるエアロゾル療法は, 安定性の良い微粒子が比較的均一に得られることから繁用されている°しかしながら, ネブライザー噴霧により薬剤の安定性は保持されたまま100%噴霧されているとの未検証の前提に基づきネブライザー療法が施行されてきた。これまで, 臨床薬学よりみたネブライザー療法における薬剤安定性について一連の研究を企画し, 超音波ネブライザー使用時に一部の薬剤で安定性に問題があることを本学会において指摘してきた。また, ネブライザー療法に用いる薬剤は, たとえ薬理作用に問題がなくとも, 臭気の発生や味覚が悪いとかえって喘息様発作を誘発することがあるといわれ, 薬剤安定性はもとより臭気や味覚などについても考慮すべきである。
これまでネブライザー専用の市販製品は少なく, 抗生物質などでは一般に注射剤を代用することが問題視され, ネブライザー専用薬剤の開発が強く要望されてきた。1996年にネブライザー専用の薬剤であるベストロン耳鼻科用の臨床使用が可能となり, 今後, ネブライザー噴霧吸入療法における新しい局所耳鼻科用剤として大いに期待される。
新規開発の超音波ネブライザーは, 超音波に薬剤が暴露される時間が短く, 薬液の温度上昇の影響も受けにくいよう工夫が凝らされており, 従来型超音波ネブライザーの使用を制限する要因であった薬剤への悪影響を回避し得る機器である。
総じて, ネブライザー療法は大変有用であり, 薬剤安定性が保持され, 利便性が向上した超音波ネブライザーの登場と相侯って, 適正なネブライザー療法が多くの患者に福音をもたらすことを強調したい。

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