耳鼻咽喉科展望
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中耳疾患の聴力自然経過と手術適応
阪上 雅史
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2000 年 43 巻 4 号 p. 266-275

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抄録

慢性中耳炎の聴力 (93耳) を手術せずに長期間観察すると悪化する傾向にあった。加齢の影響を最小限にするために, 対側正常な一側性慢性中耳炎耳24耳の会話域気導聴力を対側耳と比べると, 慢性中耳炎耳は0.62dB/年, 対側耳は0.13dB/年悪化し, 両者には有意差があった (p<0.02) 。骨導聴力は周波数が高くなるほど, 悪化の程度が大きかった。真珠腫性中耳炎では (23耳), 会話域気導聴力が弛緩部型1.77dB/年, 緊張部型2.41dB/年悪化した。耳硬化症では (7耳), 会話域2.36dB/年悪化し, 骨導は高周波域で約1dB/年悪化した。以上より, 慢性中耳炎, 弛緩部型真珠腫, 緊張部型真珠腫・耳硬化症の順に聴力悪化の程度が大きかった。
上記の聴力経過を参考にしながら, 臨床上問題となる初期真珠腫, 両側罹患, only hearing ear, 高齢者, アブミ骨手術の手術適応について述べた。

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