対側外耳道に陽圧 (200daPa), 陰圧 (-200daPa) の圧刺激を加え, 検耳で音響性アブミ骨筋反射と同様の下向きの波形を得た (30~33%) 。これは顔面神経麻痺耳で検出されず, アブミ骨筋反射と考えた。また対側圧刺激と同側音刺激を同時に負荷し, 音響性アブミ骨筋反射の振幅増大を95%に認めた。さらに一側聾例において聾耳に圧刺激を加えたところ9例中2例にアブミ骨筋反射が誘発され, 圧刺激によるアブミ骨筋反射の刺激部位として耳石器の可能性が考えられた。アブミ骨筋反射の作用機序として, 従来は中耳伝音インピーダンス増大による音の中耳から内耳への入力調節が考えられている。しかし高周波数音に対する非効率性や骨導経由の音刺激, 圧刺激などによるアブミ骨筋反射の存在を考慮すると, アブミ骨筋反射は内耳への直接作用説, すなわち, アブミ骨底板の外側偏位による内耳圧の変化が内耳インピーダンスを調節する可能性を提唱した。