耳鼻咽喉科展望
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多房性術後性上顎嚢胞に対する内視鏡下鼻内手術 (ESS) の適応と限界
宇田川 友克柳 清石井 彩子今井 透
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2005 年 48 巻 3 号 p. 160-166

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抄録

多房性の術後性上顎嚢胞は診断, 治療をする上で難渋する疾患の一つである。今回我々は片側三房性以上の術後性上顎嚢胞9症例について検討した。診断の上では多房性嚢胞の正確な数や位置を把握する術前画像診断としてCTとMRIの併用が有効であった。また, 術程は内視鏡下鼻内手術単独症例が7例, 内視鏡下鼻内手術に経歯齦法を併用した症例が2例であった。術式の選択や予後を判定するために嚢胞の配列により直列型, 並列型, 混合型に分類した。固有鼻腔から離れた外側の嚢胞は術式に関係なく術後再閉鎖した症例が多かった。手術の注意点として, 骨性の嚢胞壁を鉗除中に多量出血した症例を経験したため, 手術時には上顎骨の変形に伴う動脈の走行変位を念頭に置く必要があると思われた。
多房性嚢胞の問題点として, どの嚢胞が症状を発症しているのか判断が難しく, 我々はすべての嚢胞を開窓するようにしている。今回の症例検討では当院で施行した手術後に症状が再発した症例は今のところ経験しておらず, 多房性術後性上顎嚢胞の症状寛解のためには可能な限りすべての嚢胞に対して処置をすることが望ましいと考えた。

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