耳鼻咽喉科展望
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中耳粘膜の炎症度と中耳粘膜血流動態, 中耳腔全圧との関係についての研究
歌橋 弘哉
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2005 年 48 巻 5 号 p. 283-291

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抄録
中耳粘膜におけるガス交換は, 中耳腔と粘膜組織内の細胞問液との間で生じる気体分圧較差の平衡状態維持のために起きる現象であり, その結果中耳腔全圧が変化する。滲出性中耳炎などの中耳炎疾患において, 中耳粘膜の炎症に伴う組織学的な変化は中耳病態の治癒過程に影響を与えており, その中耳粘膜の炎症病態を推察する一つの手段として以前より中耳腔全圧値測定の有効性を報告してきた。本研究では, 中耳粘膜の炎症性変化をきたした病態で, 中耳腔全圧の変化, 粘膜内血流動態と粘膜の組織学的な変化に密接な関係を有していると推察し, それらの関係について検討した。ウサギ中耳炎モデルを対象として, 中耳腔全圧の最大値と, レーザー血流計を用いて中耳粘膜内血流量を測定した。またウサギ側頭骨の組織標本を作製し, 粘膜の炎症性変化度を分類し比較検討した結果, 中耳粘膜の炎症性変化度に応じて, 粘膜内血流量も低下した。血流量測定は粘膜内毛細血管網の状態を観察しており, さらに組織所見とある程度関連することから, 血流量測定も粘膜の炎症病態を反映する検査法として有用であると考えた。
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