耳鼻咽喉科展望
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慢性穿孔性中耳炎, 慢性鼓膜炎, 慢性外耳道炎に対するブロー液の有用性について
永野 広海吉福 孝介黒野 祐一
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2007 年 50 巻 5 号 p. 306-312

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抄録

[目的] ブロー液.は, 19世紀にBurowによって考案され, 本邦では, 2003年に寺山らが難治性の外耳, 中耳炎に対して有効であると報告している。今回我々はブロー液の臨床効果を検討した。 [対象と方法] 年齢10-94歳, 男性25例27耳, 女性32例37耳合計57例64耳, 対象疾患は, 慢性穿孔性中耳炎30耳, 慢性鼓膜炎19耳, 慢性外耳道炎15耳とした。方法は, 約10分間ブロー液で耳浴もしくはこれを浸した綿球を挿入した。耳漏の量と細菌学的効果を, 「著効」, 「軽快」, 「不変」, 「悪化」の4段階で評価した。また性別, 手術の有無, 鼓膜穿孔の有無, 肉芽の有無, ブドウ球菌の有無で分類し, 治療効果の有意差について検討した。
[結果] 慢性穿孔性中耳炎は9/30耳が著効, 11/30耳が軽快, 9/30耳が不変, 1/30耳が悪化, 慢性鼓膜炎は10/19耳が著効, 4/19耳が軽快, 2/19耳が不変, 3/19耳が悪化, 慢性外耳道炎は13/15耳が著効, 1/15耳が軽快, 1/15耳が不変, 0/15耳が悪化した。慢性穿孔性中耳炎, 慢性鼓膜炎, 慢性外耳道炎の3群間の治療効果に関する統計学的検討 (Kruskal-Wallis test) では, P=0.01と有意差を認めた。細菌検査では, 61耳で細菌, 真菌が検出され, MSSAが最も多く19耳 (29.7%) であった。統計学的 (Mann-Whitney's U test) には, 性別p=0.61, 手術の有無p : 0.17, 穿孔の有無p=0.02, 肉芽の有無p=0.005, 黄色ブドウ球菌の有無p=0.72で, 鼓膜穿孔を認める症例, 肉芽を認める症例で治療効果に有意差を認めた。
[結論] 鼓膜穿孔, 肉芽を認める症例でのブロー液は効果が乏しく, 漫然と使用することのないように気をつけるべきであると思われる。

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