Otology Japan
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原著論文
耳管開放症診断基準(案)の提唱
菊地 俊晶小林 俊光大島 猛史川瀬 哲明
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2009 年 19 巻 5 号 p. 643-648

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抄録
1)取り込みを可及的に排除した厳格な診断基準の作成を目的として、耳管開放症診断基準(案)を提唱した。以下の(1)(2)(3)全項目を満たすものを「耳管開放症確実例」、(2)(3)を満たすものを「耳管開放症疑い例」とした。(1)鼓膜の呼吸性動揺を認める。(2)自声強聴、呼吸音聴取、耳閉感を認める。(3)上記(2)の症状が耳管閉塞処置により改善する。註1)鼓膜の呼吸性動揺の検査時、鼻すすり癖を有する患者の場合には、鼻すすりによる耳管閉鎖があればこれを解除してから検査を行うと診断率が向上する。註2)「耳管開放症疑い例」の診断に際しては、上半規管裂隙症候群を除外する必要がある。
2)当科耳管開放症外来を受診した421名523耳にretrospectiveに本診断基準(案)を適用した結果、「耳管開放症確実例」は332耳(63.5%)、「耳管開放症疑い例」は99耳(18.9%)で両者の合計は431耳(82.4%)で、他疾患と診断した例は92 耳(17.6%)であった。他疾患では、耳管狭窄、嚥下時の耳の違和感など耳管開放症以外の耳管機能障害と判断された症例が64耳、内耳障害と考えられた例が26耳あった。
3)本診断基準(案)は「鼓膜の呼吸性動揺」を「耳管開放症確実例」の要件としているため、耳管開放症でありながら、諸種の要因でこれが検出できないために、「耳管開放症疑い例」にとどまる症例が少数ながら存在した。しかし、他疾患の混入を可及的に避けるという目的からすると、おおむね妥当な診断基準(案)と考えられた。また、上半規管裂隙症候群の症例が「耳管開放症疑い例」となり、鑑別診断上重要であるので注釈を設けた。
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© 2009 日本耳科学会
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