Otology Japan
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原著論文
慢性中耳炎を基礎とした側頭骨嚢胞の1例
久保田 和法福島 典之平位 知久片桐 佳明
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2011 年 21 巻 3 号 p. 207-211

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抄録

慢性中耳炎を基礎とした側頭骨嚢胞の1例を経験した。症例は65歳女性。主訴は右耳漏、右難聴。1年前から耳漏が増加したため、近医耳鼻科受診。右外耳道に腫瘤性病変を認め、当科紹介となった。初診時、外耳道腫瘤のため鼓膜の観察は不可能だった。聴力検査では患側耳は聾であった。CTでは、右乳突洞を中心に、周囲骨を圧排しながら、後頭蓋窩方向、外耳道に伸展する軟部組織陰影を認めた。外来での外耳道腫瘤の穿刺吸引細胞診では茶褐色の漿液性内容物を吸引した。内容物の病理細胞学的検査では赤血球、組織球、リンパ球を認めた。以上より右側頭骨嚢胞として手術を施行した。手術所見では周囲にコレステリン肉芽腫を伴う嚢胞を乳突洞内に認めた。また鼓膜には大穿孔を認め、乳突洞から鼓室峡部にかけて炎症性肉芽が充満していた。慢性炎症による肉芽が乳突洞口を閉塞したことが、嚢胞発生の原因と考えられた。そこで、ツチ骨、キヌタ骨を摘出して上鼓室の閉塞を解除した上、鼓膜を形成、手術を終了した。聾耳のため、伝音再建は行わなかった。一部切除した嚢胞壁の病理検査でコレステリン結晶を認めた。

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© 2011 日本耳科学会
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