抄録
サービス・エンジニアリング産業などで開発されている技術経営手法を応用し、「技術の可視化」を試みた。
耳鼻科医師経験10年目までに経験しておくべき手術件数の目標値をアンケート調査に基づき設定した。その結果、術者として経験すべき手術件数の目標値は鼓膜形成術19例、鼓室形成術38例、乳突削開術29例と設定できたが、これらは10年までに達成することが困難と考えられた。
そこで習得分野の偏りを是正するために、我々の教室では耳鼻科医師経験10年未満の若手医師に対して各種の手術執刀数を毎月記録・提出し、若手医師と指導医の間でデータを共有して、現場へフィードバックすることにした。共有するデータは個人の手術の到達度とグループの平均値、目標値などであり、個々の手術数の把握や他者との比較が可能となった。このような技術の可視化は習得分野の偏りの是正に有用で、卒後教育に必要であると思われた。