2012 年 22 巻 5 号 p. 878-885
先天性真珠腫初回手術症例59名59耳の臨床的特徴を発生部位別に検討し治療方針について考察した。鼓室型 (54耳) の病変は鼓室上方、特に後上象限に多く認められた。乳突非削開で摘出した症例は28耳で、うち9耳は外耳道内切開で摘出し得た。鼓室内に限局した症例は外耳道内切開法のよい適応となると考えられた。乳突削開術を要した症例は26耳で、1耳を除き外耳道後壁を保存しつつ摘出可能であった。上鼓室、乳突腔進展がある症例は外耳道後壁保存型乳突削開術を適応すべきと思われた。錐体部真珠腫 (3耳) は内耳障害を併発していた。open法による乳突腔・迷路削開術を原則とするが、術中髄液漏が見られた場合は腹部脂肪の充填を要した。乳突型 (2耳) では内耳骨破壊はあったものの、内耳機能は保たれていた。迷路を温存した経乳突法が治療の原則と考えられた。