抄録
黄色ブドウ球菌の慢性中耳炎分離株と健常者の鼻腔内分離株について、Multi-locus sequence typing (MLST) 法による遺伝子解析 (ゲノムタイピング) を行い、黄色ブドウ球菌の系統解析を行った。7つのハウスキーピング遺伝子のうち5つ以上を共有する系統を同じ遺伝子群; Clonal Complex (CC) とすると、本症では、鼻腔内と比較してCC5が23%と最も多く、有意差を認めた (P<0.001)。次いで、CC8が17%となった。そして、鼻腔内には稀なCC59、CC75、CC121を認めた。本症由来の黄色ブドウ球菌の集団構成は健常者のそれと明らかに異なり、すでに報告されているアトピー性皮膚炎や伝染性膿痂疹のものとも異なっていた。本症から分離された菌株の病原性について今後の検討が必要と思われた。