近年の画像診断や内視鏡下手術等の発達は目覚ましく、解剖学教育にも新たな潮流が求められる中、解剖学実習における側頭骨内の中耳や内耳の剖出では、耳鼻咽喉科医師による剖出指導が取り入れられている。さらに高学年のクリニカル・クラークシップ実習では、耳鼻咽喉科実習を選択した学生に側頭骨標本を削開して中耳や内耳を剖出する機会が供与されるなど、より実践的な解剖学教育が進んでいる。加えて、研究室配属実習では電子顕微鏡を用いた有毛細胞の観察が行われ、解剖学を通じて耳科領域の魅力を伝える取組みも展開されている。2010年に「臨床医学の教育研究における死体解剖のガイドライン案」が提案されたことを受け、卒後臨床医による側頭骨削開をはじめとした「献体標本による耳科手術手技研修」を実施する上では、耳科学会をはじめとする関連学会によるガイドラインの整備が望まれる。