2016 年 26 巻 5 号 p. 644-649
高度な浅在化鼓膜に対する手術では、残存外耳道・鼓膜上皮が限られているため、骨部外耳道のほとんどを上皮で覆うことができず広範囲に骨壁が露出してしまう。この広範囲な皮膚欠損部分をどのように対処するかは、本疾患の手術において大きな問題点のひとつである。当院では、露出した骨壁の被覆材料として耳後部下方に茎を有し頭蓋骨膜から作成した有茎弁を用いている。これまでに6例の浅在化鼓膜に対して本術式を行った。外耳道皮膚欠損部分をすべて遊離皮弁で覆う従来の方法に比べ、術後の外耳道上皮化は速やかであった。今回の手術で用いた有茎耳後部頭蓋骨膜弁は、鼓膜まで達する十分な長さを有しかつ厚みがさほどないため、外耳道内の被覆材料として非常に有用と考えている。また作成方法は非常にシンプルで、術後例でも活用が十分期待できることも利点の一つとして挙げられる。