Otology Japan
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原著論文
ムコ多糖症の聴覚障害
高野 さくらこ阪本 浩一坂下 哲史岡本 幸美小杉 祐季井口 広義
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2017 年 27 巻 5 号 p. 706-712

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抄録

ムコ多糖症(Mucopolysaacharidoses:MPS)は、ライソゾーム酵素の欠損により、ムコ多糖が細胞内に蓄積する先天代謝異常症である。比較的まれな遺伝性疾患である。MPSは、結合組織を中心にムコ多糖が蓄積することにより進行性の症状が起こる。耳鼻咽喉領域では反復性・難治性の慢性中耳炎、難聴、上気道狭窄がある。MPSの治療は対症療法、酵素補充療法(ERT)・造血幹細胞移植(HCT)の原因療法である。

対象は当科外来を受診し聴力検査を行ったMPS患者31名であり、初回聴力検査を行った年齢は平均12. 1歳であった。聴力、ERT・HCTの有無、中耳炎の有無、聴力経過について検討した。初回聴力検査では混合性難聴が44%と最も多く、中等度難聴が45%であった。聴力経過をおった26例中(平均観察10. 8年)、聴力悪化例は42%、改善例が19%であったが、HCT歴のある患者では難聴の進行が抑制されている傾向にあった。MPSは早期治療開始が患者の予後に影響するため、早期診断が非常に重要である。

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