Otology Japan
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27 巻 , 5 号
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テーマセッション9
  • ~HIBIKIプロジェクト~
    伊藤 壽一
    2017 年 27 巻 5 号 p. 671-676
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    本プロジェクトの目的は、高度難聴および中等度難聴に対する新しい治療方法として、Micro/Nano-Electro-Mechanical Systems(MEMS/NEMS)を用い、完全埋め込み可能であり、外部電源を必要としない人工聴覚器を開発することである。

    我々は超微細加工技術であるMEMS/NEMSの進歩に着目し、生体における有毛細胞の役割、すなわち、物理的な刺激である音響刺激を神経信号(電気信号)に変換する役割を再現できる新規人工聴覚器を開発した。我々は本圧電素子膜を有する新規人工聴覚器を「人工聴覚上皮、HIBIKIデバイス」と名付けた。開発したデバイスでは、ナノスケール膜厚の圧電素子が蝸牛基底板直下に留置され、蝸牛基底板振動が圧電素子の歪みを誘導し、電力が生じる。この電力により、蝸牛神経(ラセン神経節細胞)が刺激され、音響刺激が中枢に伝えられる。

    作製した圧電素子膜に対し音刺激を与えると膜は振動し、振動の振幅に応じた電位を発生することが確認された。また膜の振動は周波数特異性を有することも分かった。本圧電素子膜の振動で生じた電位を増幅し、モルモット蝸牛へ埋め込んだ電極から蝸牛神経を刺激すると電位依存性聴性脳幹反応(eABR)を記録することができた。

    本デバイスをヒトに応用するにはまだ多くの課題はあるが、近い将来の臨床応用を目指して研究中である。

原著論文
  • 山野 貴史, 樋口 仁美, 坂田 俊文, 中川 尚志, 森園 哲夫
    2017 年 27 巻 5 号 p. 677-679
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    我々は、以前より酸の内耳に及ぼす影響を、酢酸を用いて曝露時間やpH、浸透圧を変化させることで検討してきた。今回は、pHを4、浸透圧を300±20mOsmに統一した3種類の酸(ギ酸:分子量46、酢酸:分子量60、プロピオン酸:分子量74)を中耳腔内に投与し、分子量の違いが内耳に及ぼす影響について、蝸牛複合電位(compound action potential:CAP)を測定して検討した。3剤ともに30分後ではCAPの閾値上昇はなかったが、24時間後で閾値上昇を認めた。中耳腔内に投与された酸は、その分子量が異なっても同様に内耳毒性を有する可能性があると示唆された。

  • 藤岡 正人, 疋島 啓吾, 岡野 ジェイムス洋尚, 若林 健一郎, 山田 雅之, 大石 直樹, 畑 純一, 小川 郁
    2017 年 27 巻 5 号 p. 680-688
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    基礎研究の結果を臨床応用する「橋渡し研究」において、臨床症候をなるべく忠実に再現する動物モデルの存在は重要であり、創薬研究では齧歯類と並行して大動物が用いられることが多い。マーモセットは動物実験に汎用される旧世界サルと比べて、小型で繁殖力もあり、温厚で扱いやすく新規導入のハードルが低い。全ゲノムも解読され遺伝子改変も可能なため実験動物としての将来性も高く、齧歯類モデルで症候が再現できない遺伝性難聴や、内耳再生のように種差が予想される研究への応用が期待される。今回我々はこの小型霊長類コモンマーモセット(Callithrix jacchus)の側頭骨解剖につき、CT、高解像度MRIを用いて検討した。内耳、鼓室内(耳小骨を含む)の構造はヒトと極めて類似していた一方で、乳突蜂巣は未発達で単洞を呈していた。頭蓋や中耳に比して内耳が大きく、耳後切開による内耳への薬剤局所投与を検討するモデル動物として適していると考えられた。

  • 稲本 隆平, 宮下 武憲, 星川 広史
    2017 年 27 巻 5 号 p. 689-693
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    補聴器印象剤による耳小骨の骨折、離断を伴う中外耳異物の1例を経験したので報告した。患者は慢性中耳炎の既往があり、身体障害者手帳を交付され、良聴耳に福祉用の補聴器を装用していた。補聴器販売店業界未加入の認定補聴器技能者が、訪問販売時に自費での両耳装用を勧め、その場で耳型採型を行った。印象剤の外耳・中耳への遺残、耳小骨の骨折、離断が生じ、全身麻酔下に印象剤の摘出、鼓室形成術(Ⅲc)を行った。補聴器販売店業界未加入の販売店の者に、認定補聴器技能者認定試験の受験資格である補聴器相談医の指導承諾を与える際には慎重に行う必要があると考えられた。また、補聴器の適応決定や術後耳、中耳炎後遺症などの病的な耳に対する耳型採型などの医療行為を行わないように補聴器販売店への指導を徹底する必要があると考えられた。

  • 亀井 昌代, 桑島 秀, 佐藤 宏昭, 平海 晴一, 小田島 葉子
    2017 年 27 巻 5 号 p. 694-698
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    中耳の周波数ごとに吸収された音響エネルギーの割合(absorbance)を測定できるワイドバンドティンパノメトリを用いて、日本人成人正常耳のabsorbance 値につき検討した。さらに、補聴器を装用している伝音難聴1例、混合性難聴症例3例、計4例と比較し、補聴器調整の一助となるか否かについて検討した。その結果

    1.正常例119耳のabsorbanceの90、10%タイル値および平均値を求め、デフォルトの標準値(範囲)と比較したが音圧差はごく僅かであった。

    2.伝音難聴、混合性難聴の補聴器装用症例について、補聴器の利得にabsorbance値を加算した予測閾値と音場閾値の実測値とは関連がみられた。

    以上より、補聴器の利得による予測音場閾値と音場閾値の実測値が一致しない場合は、鼓室内の病変による吸収された音響エネルギーも考慮して補聴器の調整をしていく必要がある。

  • 蓮 琢也, 多田 剛志, 海邊 昭子, 穴澤 卯太郎, 田中 康広
    2017 年 27 巻 5 号 p. 699-705
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    Gradenigo症候群は1904年にGradenigoによって報告された中耳炎、三叉神経痛、外転神経麻痺を3主徴とする症候群である。

    症例は51歳男性、20xx年8月に左耳痛にて近医受診し、左急性中耳炎と診断され、内服加療を開始した。しかし耳漏と頭痛、複視と段階的な増悪を認めたため、近医受診から3週間で当院紹介となった。初診時、HbA1c 11. 9%とコントロール不良の糖尿病が認められた。左急性中耳炎と三叉神経第一枝領域の疼痛、左外転神経麻痺の3徵からGradenigo症候群の診断で緊急入院となった。入院同日に施行したCTでは鼓室および乳突洞に軟部陰影を認めた。錐体尖方向には含気腔や蜂巣構造はなく、軟部陰影を認めたものの骨髄との鑑別は困難であった。しかしながらMRIで患側の錐体尖部がT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号、拡散強調画像で高信号、T1脂肪抑制画像で抑制なしの所見を認めたため、炎症の存在を考慮した。入院当日に左鼓膜換気チューブを留置し、点滴加療を開始した。抗菌薬はセフトリアキソンNa(CTRX)4g/dayを選択し、硬膜浮腫の改善を目的にハイドロコーチゾン1000mg/day 3日間の投与を行った。治療は奏功し、耳痛、耳漏症状は速やかに消失した。第7病日には三叉神経第一枝領域の疼痛も消失した。第10病日に軽快退院となったが、その後外来通院を継続し、第30病日に外転神経麻痺も治癒を得た。

    脳膿瘍やS状静脈洞血栓症を伴わないGradenigo症候群に対しては、慎重な経過観察と適切な抗菌薬で治療が可能と考える。

  • 高野 さくらこ, 阪本 浩一, 坂下 哲史, 岡本 幸美, 小杉 祐季, 井口 広義
    2017 年 27 巻 5 号 p. 706-712
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    ムコ多糖症(Mucopolysaacharidoses:MPS)は、ライソゾーム酵素の欠損により、ムコ多糖が細胞内に蓄積する先天代謝異常症である。比較的まれな遺伝性疾患である。MPSは、結合組織を中心にムコ多糖が蓄積することにより進行性の症状が起こる。耳鼻咽喉領域では反復性・難治性の慢性中耳炎、難聴、上気道狭窄がある。MPSの治療は対症療法、酵素補充療法(ERT)・造血幹細胞移植(HCT)の原因療法である。

    対象は当科外来を受診し聴力検査を行ったMPS患者31名であり、初回聴力検査を行った年齢は平均12. 1歳であった。聴力、ERT・HCTの有無、中耳炎の有無、聴力経過について検討した。初回聴力検査では混合性難聴が44%と最も多く、中等度難聴が45%であった。聴力経過をおった26例中(平均観察10. 8年)、聴力悪化例は42%、改善例が19%であったが、HCT歴のある患者では難聴の進行が抑制されている傾向にあった。MPSは早期治療開始が患者の予後に影響するため、早期診断が非常に重要である。

  • 福家 智仁, 山田 弘之, 福喜多 晃平, 金児 真美佳, 澤 允洋, 上田 航毅, 小林 大介
    2017 年 27 巻 5 号 p. 713-718
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    聴神経腫瘍はしばしば突発的に難聴をきたすことがあり、突発性難聴との鑑別が重要である。当科では突発性難聴が疑われた症例に対してステロイド漸減療法を開始するとともに内耳脳幹領域MRI検査を行っている。2002年から2016年までの15年間に入院加療した730例中、MRI検査にて12例聴神経腫瘍が判明し、8例が経過観察となり4例が手術加療された。聴神経腫瘍の特徴的な聴力像として谷型を示すことがあるが、該当するのは3例のみであったことから、聴力像のみでは聴神経腫瘍を疑うことは困難と考えられた。突発難聴をきたした聴神経腫瘍に対してステロイド投与を行っても聴力が改善することがあるため、MRI検査を行わなければ聴神経腫瘍を見逃す可能性がある。突発性難聴が疑われた場合は早期の加療が必要なのはいうまでもないが、確率は低いものの聴神経腫瘍の可能性があるため、スクリーニング検査としての単純MRI検査を行うことは意義があると思われた。

  • 山本 沙織, 五百藏 義彦, 魚住 真樹
    2017 年 27 巻 5 号 p. 719-724
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    上半規管裂隙症候群は先天的な骨菲薄化に外傷や脳脊髄圧といった後天的因子が加わって発症すると考えられている。本症例は強大音聴取時のめまいを契機に発見された上半規管裂隙症候群で、拍動性耳鳴を伴っており、CTでは上半規管を横断するかのような血管様陰影を認めた。発症機序は比較的明らかで、頭部打撲により外傷性硬膜動静脈瘻を生じ、横/S状静脈洞へのシャント血流により近傍の上錐体静脈洞の血流を上昇させ、この新規血管圧により上半規管骨迷路が破綻してTullio現象様症状が出現したと考えられた。血管内治療後に拍動性耳鳴は消失したが、裂隙を閉鎖していた血管圧が減少したために瘻孔症状が出現した。上半規管に近接する上錐体静脈洞の後天性・片側性の圧変化という観点で考えると、上半規管裂隙症候群の中には潜在的に硬膜動静脈廔が関与するものが含まれている可能性が示唆された。

  • 阿部 康範, 山田 啓之, 羽藤 直人
    2017 年 27 巻 5 号 p. 725-732
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    CHARGE症候群は胎生期の器官形成異常により多発奇形を合併する症候群である。視覚・聴覚といった感覚器官の障害は、その発達遅滞に大きく関与すると言われており、先天性難聴がある場合には人工内耳手術が行われる。しかし、その多彩な症候のために難聴に対する診断、治療は後手に回ることが多い。また多種多様な耳領域の奇形により、極めて手術難易度が高い。今回我々はCHARGE症候群の2例に対して人工内耳手術を施行した。安全に人工内耳手術を施行するためには、術前の詳細な解剖学的指標の評価と手術のプランニングが重要であると考えられた。

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