中耳伝音系を再建する際,耳小骨の可動性は術後成績に大きな影響を及ぼすため,その評価は重要である.しかし,固着部位や固着の程度と耳小骨の可動性の関係について統一的な見解は得られていない.本研究では,様々な病状における耳小骨可動性を定量的に調べるため,中耳有限要素モデルを用いて耳小骨固着を再現した.その際の耳小骨の可動性変化を数値解析により求め,耳小骨の固着の客観的な診断方法について検討した.その結果,前ツチ骨靭帯の固着と後キヌタ骨靭帯の固着の有無を区別する手法として,ツチ骨とキヌタ骨の可動性の差に着目することが有用であることが示された.ただし,本診断方法を的確に行うためには,各耳小骨の可動性のわずかな差を区別する必要があり,触診では区別が難しい場合もある.そのため,耳小骨の可動性を定量的に評価できるデバイスを活用することが有効であると考えられる.