聴神経腫瘍は第VIII脳神経から発生し,そのほとんどは前庭神経から発生する前庭神経鞘腫である.神経線維腫症II型(NF2)に発生する両側性の前庭神経鞘腫は稀な疾患であるが,孤発性の前庭神経鞘腫は,画像検査の発達や平均寿命の伸長により,過去に想定されていたよりもはるかに頻度の高い疾患であることが明らかになってきた.
稀ではなく,時に重篤となる疾患であるにもかかわらず「前庭神経鞘腫がなぜ発生し,どのようなメカニズムで増大するのか」,また「聴力障害のメカニズム」の詳細は不明である.
抗VEGF抗体ベバシズマブの前庭神経鞘腫への有効性が報告された2009年以降,薬物治療の研究も進んでいる.現在の前庭神経腫瘍の病態解明に関わる研究の概略と併せて,筆者がこれまで行ってきた前庭神経鞘腫の遺伝子解析・薬物治療・聴力障害のメカニズム解析研究のご紹介をする.
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