Otology Japan
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原著論文
迷路気腫と気脳症を伴った航空性外リンパ瘻例
田中 健相原 康孝石井 賢治比野平 恭之林 賢原 稔門田 哲弥三浦 康士郎本岡 太心加我 君孝神尾 友信
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2021 年 31 巻 4 号 p. 485-489

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抄録

迷路気腫と気脳症を伴った航空性外リンパ瘻の一症例を経験したので報告する.症例は28歳男性で,飛行機搭乗後から耳痛・耳鳴り・難聴・回転性めまいを自覚した.他院で外リンパ瘻と診断され,発症後2日目に当院へ受診となった.左耳の聴力は複数の測定周波数でスケールアウトであり,CTで内耳と頭蓋内に空気と思われる低吸収域を認めた.同日緊急入院となり,抗菌薬と副腎皮質ステロイドを投与したのち,発症後4日目に瘻孔閉鎖術を施行した.耳小骨連鎖は正常であったが,アブミ骨底板が卵円窓からわずかに浮いている状態であった.外リンパの漏出は確認できなかったが,内耳窓を皮下組織と薄切軟骨で被覆しフィブリン糊で固定した.手術翌日からめまいは改善し,術後11日目で眼振は消失した.術前に聾だった聴力は,術後4か月目に70.0 dB(4分法)まで改善した.

航空性外リンパ瘻に気脳症まで生じた稀な症例であり,どのような機序で頭蓋内に空気が混入したか考察を行った.また,中耳洗浄液のCTP(cochlin-tomoprotein)検査が陰性であったのは,外リンパが大量に漏出して産生が追い付かず,検体採取時には枯渇していたためではないかと考えられた.

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