2022 年 32 巻 4 号 p. 402-411
高安動脈炎は,大動脈およびその基幹動脈などに生じる大型血管炎である.難聴を合併することは以前より知られているが,その詳細については不明な点も多い.今回,難聴が初発症状と考えられた高安動脈炎の2例を経験した.症例1は57歳の女性.右滲出性中耳炎として長期間治療を受けていたが,その後頭痛,意識障害を来し高安動脈炎の診断に至った.症例2は42歳の女性.左突発性難聴を認めたが改善しなかった.その後右難聴,左前腕や両側下腿,手指関節の疼痛,両側爪に剥離を認めるようなり診断に至った.いずれの症例も副腎皮質ステロイドにより全身症状は改善したが,難聴は残存した.高安動脈炎における難聴の発生機序は未だに不明であり,今回経験した2症例は全く異なる経過を辿ったように,難聴の典型的な臨床像もない.難聴の経過観察中に,全身の疼痛などを合併するような場合は,高安動脈炎も念頭におく必要があると考えた.