Otology Japan
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32 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
第31回日本耳科学会総会特別企画
特別講演
シンポジウム5
  • 森田 由香
    2022 年 32 巻 4 号 p. 371-376
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    当科では,中耳真珠腫に対する外耳道後壁保存型鼓室形成術の術後再形成性再発の防止を目的として,外耳道後壁削除・乳突非開放型鼓室形成術に乳突腔充填の併用を基本術式としている.本術式は,真珠腫を明視下において摘出が可能であり,術後再形成性再発の予防や術後の生理的な外耳道形態の維持に有用である.再発率は弛緩部型で9.7%,緊張部型で20.4%であり,緊張部型は弛緩部型に比べて再発率が高く,いずれもstageが上がるにつれて再発率は高かった.現在ではstage別に様々な術式を選択しているものの,術式別の検討では,外耳道後壁削除型鼓室形成術・乳突腔充填の併用が最も再発率が低くかった.

    中耳真珠腫は進展度の他,術前聴力,蜂巣発育や含気の程度,年齢などさまざまな要因が治療成績に影響するため,stage分類を中心に,個々の症例の多様性に応じて柔軟な術式選択をすることが重要であると考えている.

特別企画「伝承したい私の極意・技」
原著論文
  • 外池 百合恵, 有本 友季子, 仲野 敦子
    2022 年 32 巻 4 号 p. 387-392
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    当院形成外科にて口蓋形成術を施行した口蓋裂児77例について,新生児聴覚スクリーニング(NHS)検査結果および滲出性中耳炎(OME)の評価と治療について検討を行った.NHS施行例73例のうち両側pass例を53例(73%)認め,生後3か月以内の初診時に鼓膜観察が可能であったNHS pass耳47耳中44耳(94%),refer耳17耳中14耳(82%)に中耳液貯留所見を認めた.口蓋形成術時77例154耳中116耳(75%)が鼓膜換気チューブ留置適応あり群であり,内訳はチューブ留置術施行が107耳,チューブ留置困難が8耳,穿孔残存が1耳であった.NHS pass耳とrefer耳では鼓膜換気チューブ留置適応に有意差を認めなかった.以上より,口蓋裂児の中耳貯留液はNHS検査後に増加し,その後口蓋形成術時まで貯留が遷延する可能性が示唆された.NHS検査結果に関わらず,口蓋裂児はOMEの経過を慎重に観察する必要があると考えられた.

  • 和田 忠彦, 岩永 迪孝, 羽田 史子, 井上 雄太, 曽我 文貴, 藤田 明彦
    2022 年 32 巻 4 号 p. 393-401
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    口蓋裂では,口蓋帆張筋・口蓋帆挙筋の走行異常や筋力低下があることで,耳管機能障害に至り,長期的な経過で真珠腫性中耳炎となる例がある.

    2014年1月〜2018年12月までに口蓋裂を合併した真珠腫性中耳炎に対して当科で鼓室形成術を施行し,1年以上経過観察しえた16耳を対象とし,主に中耳真珠腫の病態分類,術式,聴力成績,遺残性再発,再形成再発などについて検討した.

    中耳真珠腫の病態分類は,新鮮例66.7%(12耳中8耳)が緊張部型真珠腫であった.

    術式は,新鮮例91.7%(12耳中11耳)が外耳道後壁保存術式であり,聴力改善成績は,JOS基準では成功率68.8%(16耳中11耳)であった.

    また,遺残性再発は,6.3%(16耳中1耳)であり,再形成再発は,0%(新鮮例:12耳中0耳)であり,術後鼓膜換気チューブ留置が必要な症例は33.3%(12耳中4耳)であった.

    このように,耳管機能が不良とされる口蓋裂合併の真珠腫性中耳炎例にも薄切軟骨を使用した外耳道後壁保存術式は良い手術方法の一つと考えられた.

  • 齋藤 和也, 土井 勝美
    2022 年 32 巻 4 号 p. 402-411
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー

    高安動脈炎は,大動脈およびその基幹動脈などに生じる大型血管炎である.難聴を合併することは以前より知られているが,その詳細については不明な点も多い.今回,難聴が初発症状と考えられた高安動脈炎の2例を経験した.症例1は57歳の女性.右滲出性中耳炎として長期間治療を受けていたが,その後頭痛,意識障害を来し高安動脈炎の診断に至った.症例2は42歳の女性.左突発性難聴を認めたが改善しなかった.その後右難聴,左前腕や両側下腿,手指関節の疼痛,両側爪に剥離を認めるようなり診断に至った.いずれの症例も副腎皮質ステロイドにより全身症状は改善したが,難聴は残存した.高安動脈炎における難聴の発生機序は未だに不明であり,今回経験した2症例は全く異なる経過を辿ったように,難聴の典型的な臨床像もない.難聴の経過観察中に,全身の疼痛などを合併するような場合は,高安動脈炎も念頭におく必要があると考えた.

  • 木村 優介, 鴫原 俊太郎, 野村 泰之, 大島 猛史
    2022 年 32 巻 4 号 p. 412-417
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/25
    ジャーナル フリー
    電子付録

    中耳ミオクローヌスは耳小骨筋の病的な不随意運動であり,他覚的耳鳴の原因の一つである.鼓膜の動揺感や聴覚過敏などの症状だけでは診断に難渋する場合もある.今回,両鼓膜の動揺感・痙攣感に対して,強大音が入るときに鼓膜が痙攣するという症状とアブミ骨筋反射検査の反応より,アブミ骨筋性の筋性耳鳴の一症状と考え,初回の手術は全身麻酔下のアブミ骨筋腱切断術をおこない,一時経過をみたものの症状の再燃を認めた.その後,初回手術で確認できなかった鼓膜の不随意運動と無刺激のアブミ骨筋反射検査で基線の揺れが観察されたことから鼓膜張筋性のミオクローヌスと診断し,局所麻酔下の鼓膜張筋腱切断術をおこない症状の改善を認めた一例を経験した.外科的治療の効果は高いという報告は多いが,局所麻酔下で鼓膜の不随意運動と原因となる耳小骨筋の収縮を確認し,鼓膜張筋腱切断が必要な症例には内耳障害の軽減に努める必要もあり,術前のプランニングが重要となる.

日本耳科学会用語委員会報告
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