口蓋裂では,口蓋帆張筋・口蓋帆挙筋の走行異常や筋力低下があることで,耳管機能障害に至り,長期的な経過で真珠腫性中耳炎となる例がある.
2014年1月〜2018年12月までに口蓋裂を合併した真珠腫性中耳炎に対して当科で鼓室形成術を施行し,1年以上経過観察しえた16耳を対象とし,主に中耳真珠腫の病態分類,術式,聴力成績,遺残性再発,再形成再発などについて検討した.
中耳真珠腫の病態分類は,新鮮例66.7%(12耳中8耳)が緊張部型真珠腫であった.
術式は,新鮮例91.7%(12耳中11耳)が外耳道後壁保存術式であり,聴力改善成績は,JOS基準では成功率68.8%(16耳中11耳)であった.
また,遺残性再発は,6.3%(16耳中1耳)であり,再形成再発は,0%(新鮮例:12耳中0耳)であり,術後鼓膜換気チューブ留置が必要な症例は33.3%(12耳中4耳)であった.
このように,耳管機能が不良とされる口蓋裂合併の真珠腫性中耳炎例にも薄切軟骨を使用した外耳道後壁保存術式は良い手術方法の一つと考えられた.
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