2004 年 73 巻 6 号 p. 732-740
音響パルスを用いた画像化技術は,超音波検査やソナーなどへの応用においてよく知られているところである.われわれはこの分野の新展開として,超短レーザーパルスを用いて固体表面に高周波数音響パルス(表面弾性波パルス)を発生させ,その伝播過程を実時間でイメージングする技術を開発した.別のレーザーパルスをプローブとして用いて試料表面を走査することにより,原子の直径よりも小さな振幅の格子振動を固体表面において観測する.発生される表面弾性波パルスの波長はミクロンオーダーで,その周波数は GHz にまで達する.この技術を用いることにより,結晶表面やマイクロ構造をもつ物質表面を伝播するコヒーレントフォノン波束のダイナミクスを時間および二次元空間領域で追跡する.