2009 年 78 巻 9 号 p. 862-867
電子エネルギーバンドの分散についての研究は多いが,バンドの性質(バンドを構成している原子軌道,結合状態,軌道角運動量など)についての実験的研究は難しく,ほとんど研究されてきていない.われわれは,偏光放射光と二次元光電子分光を組み合わせて,三次元的なバンド分散のみならず,バンドの性質を解析する研究を進めてきた.直線偏光で励起した光電子の放出角度分布から,バンドを構成する原子軌道が特定できる.ブリュアンゾーンごとの強度の変化から,結合軌道か反結合軌道かが判別できる.円偏光で励起した価電子光電子の放出角度分布における円二色性から,バンドを構成する原子軌道の軌道角運動量が特定できる.