2016 年 85 巻 5 号 p. 417-421
トポロジカル絶縁体と普通の絶縁体との間には,物質中の電子がもつ位相幾何学的な性質のためにディラックコーンと呼ばれる特殊な金属的電子状態が現れ,ディラック電子が伝導を担うことが知られている.一方,トポロジカル絶縁体に「金属」を接合した場合のディラック電子への影響は,電子回路や素子構造を作製するうえで不可欠な情報であるものの,これまで未解明であった.本稿では,トポロジカル絶縁体上にビスマス超薄膜をエピタキシャル成長させ,その電子状態をスピンおよび角度分解光電子分光を用いて直接決定して,実空間においてトポロジカル状態が移動する「トポロジカル近接効果」と呼ばれる新たな現象を見いだした研究を紹介する.