液晶性有機半導体の結晶薄膜を利用する新たな有機半導体材料の展開と有機トランジスタへの応用を紹介する.結晶に比べてソフトで分子が自己組織的に凝集する液晶相は,通常の結晶材料では困難な分子配向の制御や結晶粒界方向の制御,さらには溶液プロセスにおいても平坦(へいたん)・均一性を有する結晶膜の作製に利用できる.液晶相の中でも高次の配向秩序を示す液晶相,さらに分子レイヤ内でヘリングボーン構造を有するスメクチックE(SmE)相は結晶化してもヘリングボーン構造を保持するため結晶膜において高移動度が期待でき,結晶相から液晶相へ転移しても固体様の性質のため融解することもなく薄膜形状を保ち,耐熱性の改善にも利用できる.これに着目し,SmE相を発現する液晶性有機半導体を設計し,その多結晶薄膜を有機トランジスタへ応用することにより,200°Cまでの耐熱性と有機単結晶並みの10cm2/Vsを超える高移動度を併せもつ高品質なトランジスタを実現できた.