2018 年 87 巻 10 号 p. 764-767
半導体の空準位のエネルギーや状態密度は,電子伝導や化学反応性などに関わる重要な情報である.逆光電子分光法(IPES)は,この空準位を調べる最も有力な実験手法である.これは占有準位を調べる光電子分光法(PES)の逆過程と見なすことができる.しかし,IPESは信号強度が非常に低く,実際の測定に使われる紫外域での断面積はPESの10-5しかない.そこで,我々は表面プラズモン共鳴(SPR)に注目した.SPRはラマン分光や蛍光分光などの光が関与する分光法の信号強度を増強することが知られている.従来のIPESではSPRと波長が合わなかったが,独自に開発した低エネルギー逆光電子分光法(LEIPS)では近紫外光を検出するため,SPRによる増強が可能になった.