2018 年 87 巻 4 号 p. 272-276
室温励起による3重項→1重項アップコンバージョン†1蛍光発光を実現する熱活性化遅延蛍光(TADF)材料に多くの関心が集まっている.TADFの放出過程は半世紀以上前にボルツマン分布に従う3準位モデルとして確立されていたが,近年の研究によって分子の励起状態ダイナミクスを考慮したより複雑なモデルへと移ろうとしている.本稿では,TADF材料とそのデバイス応用について概説したあと,TADFの基本的な考え方とその問題点,そして筆者らの過渡吸収分光法を用いた最近の研究成果を紹介する.