電気陰性度はさまざまな分野で当たり前のように受け入れられている概念である.広く用いられている電気陰性度の数値は,ポーリングの原理によって求められている.原子間の結合エネルギーによって定義されているため,これまで熱力学データを用いて算出されてきた.近年,原子間力顕微鏡(AFM)の発展に伴い,2つの原子の間に働く1本の結合エネルギーを計測できるようになってきた.AFMの探針先端の1つの原子を表面のさまざまな原子に近づけて2原子間の結合エネルギーを計測することによって,個々の原子の電気陰性度を決定した研究について紹介する.本手法では,原子の化学状態に依存する電気陰性度も計測することができるため,触媒など電子の授受が関わる現象の解明に応用できる.