応用物理
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総合報告
ペロブスカイト半導体の光電変換における高電圧・高効率化の材料開発
宮坂 力
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2021 年 90 巻 11 号 p. 662-669

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抄録

溶液塗布で作る安価なペロブスカイト半導体を使う太陽電池の効率は結晶シリコンの最高効率とほぼ同じレベルとなり,ラボで作る単セルは26%に近づき,集積モジュールの効率も20%以上に届いている.実用化に向けた耐久性確保の技術開発が進むとともに,さらなる高効率化をねらう2接合タンデムセルの製作も活発化している.一方で,学術面においてはイオン結晶としての鉛ハライドペロブスカイトの稀有(けう)な現象を見いだす基礎研究が化学と物理の両分野で進展した.イオン拡散に起因する光物性の変化が詳細に調べられ,これを抑制する方法や結晶界面の欠陥を低減するドーピング材料が多く見いだされている.これによって光電変換特性の開回路電圧はShockley-Queisser限界に近づきつつあり,GaAs半導体の特性を模倣する可能性も見えてきている.本稿ではイオン結晶の構造と欠陥寛容性という特徴がもたらすペロブスカイト半導体の基本物性を解説する.光電変換において,溶液晶析法で作る多結晶薄膜の質を高めることによって,この半導体の薄膜から高い電圧特性を取り出すための材料開発を紹介する.特にIoT用電源としても屋内照明の低光量下で高電圧を維持できる素子を提供できる可能性を示し,ペロブスカイト光電変換の技術が低炭素社会に貢献する将来性を述べる.

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© 2021 公益社団法人応用物理学会
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