リチウムイオン2次電池のさらなる高性能化を目指して,精力的な研究が数多く行われている.従来の正極材料は,材料の結晶構造を保ったままLiイオンのみが脱離挿入するため,優れた充放電サイクル特性を示す.一方で,高エネルギー密度を示すリチウム過剰系正極は,Liと遷移金属が連動することで生成される低結晶構造にて,多量のLiイオンの脱離挿入を達成していた.本稿では局所構造から平均構造まで解析可能なPair Distribution Functionを用いた構造解析より,リチウム過剰系正極の充電時にLi欠損層を支持するピラー金属イオンの移動に伴う結晶構造変化によって生成する低結晶構造の存在を明らかにした研究例を紹介する.