応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
研究紹介
有機半導体の電子移動度(n型特性)はなぜ正孔移動度(p型特性)に比べて低いのか?
伝導帯バンド構造の実測と部分ポーラロンモデルによる解明
吉田 弘幸石井 宏幸
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2024 年 93 巻 5 号 p. 284-288

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抄録

有機半導体では,電子移動度(n型特性)が正孔移動度(p型特性)に比べて1桁も低い.これは大気による電子トラップのような外因的な要因なのか,本質的に電子移動度が低いのか,明らかでなかった.筆者らは角度分解低エネルギー逆光電子分光法を開発し,初の有機半導体(ペンタセン)の伝導帯のエネルギーバンド構造(エネルギーと波数の関係)の実測に成功した.バンド幅の解析から,ポーラロンという準粒子が生成していることを明らかにし,部分ポーラロンという新たなモデルを提案した.このモデルを波束拡散法に取り込んで移動度を計算し,電子‐フォノン相互作用の影響で電子移動度が正孔移動度に比べて本質的に低いことを明らかにした.

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© 2024 公益社団法人応用物理学会
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