1999 年 68 巻 3 号 p. 262-268
犬の絵を見せても,どちらが頭で尻尾か答えられない.複雑な流体力学の方程式が解けても,こんな簡単な質問にずら満足に答えられないのが現在のコンピューターの実力である.コンピューターをもっと賢くするにはどうするのか.これまでのように,ただひたすらデバイスの極限微細化・超高集積化を追い求めるのとは異なるアプローチが必要と考える.本研究は, LSI構成の最も基本的な単位であるトランジスタの機能増強でこの課題に向かう.神経細胞ニューロンの基本機能を単体デバイスで実現したニユーロンMOSトランジスタ (vMOS) を1989年に着想,これをべ一スにハードウエアによるもっと柔軟な情報処理をめぎし,研究を進めてきた.プロセス・デバイス技術概究者の立場からの提案であり,最先端半導体集積回路技術が最も得意とする形で生体的情報処理原理のエッセンスを取り込んでいく.まだ賢いコンピューター実現にはほど遠いが,本観究の現状と今後の展望について述べる.