あらゆる生命体の遺伝情報を担うDNA分子は,ナノエレクトロニクスの見地からも大変興味深い.DNA分子は,自身の中に情報がプログラムされており,かつ自己複製する唯一の材料である.情報は, 0.34nm間隔(塩基配列の間隔)で集積されており,ナノスケールアドレスを有する鋳型としての利用が期待できる.本来約5eVのバンドギャップをもつ絶縁体であるDNA分子は,ヨウ素を用いた化学ドーピング,ナノ電極/Si基板に形成したDNA-FET素子における電界制御,蛍光分子修飾による光スイッチングなど,ユニークな特性を示す.まるで分子版のシリコンのようである.