抄録
静脈穿刺は採血や輸血のために最も一般的に行われる処置であるが、その成功は施術者の経験に左
右され、失敗に伴う疼痛、血管損傷、感染リスクが問題となる。近年、画像処理と力計測を統合した自動穿
刺システムの研究が進んでいるものの、挿入時の最適な速度や力といった力学的要因は十分に解明され
ていない。これらの課題に対し、本研究では針挿入メカニズムを分析し、安全かつ高精度な自動穿刺の実
現を目的とした。方法としては、ロボットアーム(Dobot Magician)を用いて針挿入動作を自動化し、
OpenCVによる画像認識で針先位置をリアルタイム検出する。さらに、針にフォースゲージを取り付け、挿
入時の力を高精度に計測する手法を構築した。穿刺対象として、ゼラチンとシリコンチューブで構成した
前腕モデルを使用し、おもりとImageJを用いて生体軟組織に近い力学特性となるよう調整した。外径2.4、3、
5mmの血管モデルと4種類の穿刺角度(15°, 20°, 25°, 30°) に対し、画像処理によって穿刺の安定性を評
価した。その結果、外径5mm、内径3mmのシリコンチューブが最も安定して穿刺できることが確認された。
また、臨床で一般的な穿刺速度である4mm/sにおいて、15°の穿刺角度が最小の挿入力で最も高い安定
性を示した。本システムは簡易的な構成でありながら、針挿入過程を定量的に評価でき、将来は力制御を
用いた自動穿刺の高度化に応用可能であることが示唆された。