主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
クリティカルシンキング(CT)は対人関係においても有用となる可能性が指摘されており(e.g., 廣岡他,2000),表情などの非言語的情報を手掛かりとする共感の正確さを高めるとされている(矢澤他,印刷中)。本研究では,言語的情報を手掛かりとする共感の正確さとCTとの関係を検証した。大学生58名にCT能力,CT志向性尺度,関連変数として体系的思考力の測定,および初対面のペア同士での自由会話を実施した。会話終了後に,会話中に抱いた自分自身の感情の評価と,相手が抱いていたと思われる感情の推測についての自由記述を求めた。相手の感情に対する参加者の推測と相手の実際の感情評価の類似度から共感の正確さを数値化した。共感の正確さを目的変数とした重回帰分析の結果,共感の正確さに対する効果は体系的思考力のみ認められ(95%Cl [-.60, -.07], β=-.34),CT能力(95%Cl [-.25, .28], β=.01),社会的CT志向性(95%Cl [-.45, .37], β=-.04),論理的CT志向性(95%Cl [-.19, .63], β=.22)については認められなかった。言語的情報を手掛かりとする共感の正確さにおいてはCTの有用性は見出されず,非言語的情報を手掛かりとする場合とは異なる結果となった。