主催: 日本心理学会第84回大会準備委員会(東洋大学)大会長 大島尚
会議名: 日本心理学会第84回大会
回次: 84
開催地: 東洋大学白山キャンパス
開催日: 2020/09/08 - 2020/11/02
天災・人災を問わず,世間を揺るがす大事件などの「負の現象」が起きた場合には,複数の対象が次から次へと槍玉に挙がり,非難される傾向がしばしば見られる。釘原ら(2006)はこれを社会がスケープゴートを探すような集合現象と考えた。本研究ではCOVID-19におけるこの傾向を分析し,2003年に流行したSARSの分析結果と比較を行った。分析対象として,「コロナ」または「肺炎」というキーワード検索により,3ヶ月間(2020/1/8-4/7)の新聞記事を抽出し,データベース化した。総記事数は6268記事であった。分析の結果,COVID-19での非難対象はのべ617件(9.8%)であり,SARSよりも少なかった。記事数自体は純増しており,批判対象は国が多かったが,後半には個人が非難対象として増加していた。当初は人災とみなされたのは,対応の遅れや対応のまずさであったが,五輪延期決定(3/24)以降,実際の感染者数も増えたのと呼応して,元々非難対象であったライブハウスや屋形船に加えて,海外旅行帰国者などの他者に伝染した例が急増して,自粛しないなど個人の行為に非難が向くようになったと考えられる。